「家賃も立地も完璧なテナントを見つけた!」と喜んで契約した直後、内装業者から「この物件、電気が足りないので追加で100万円かかりますよ」と宣告される……。
実はこれ、初めて店舗を出店するオーナー様が最も陥りやすい「見えない落とし穴」です。
一言で言うと、テナントの「電気容量(アンペア数)」を契約前にプロに確認してもらわないと、後から致命的な追加コストが発生します。
本記事では、建築防衛パートナーとして日々多くの図面と見積もりを精査しているプロの目線から、「電気容量不足」によるトラブルの実態と、事業資金を守るための防衛策を解説します。
なぜ「電気容量不足」のトラブルが起きるのか?
アパレル・事務所跡地に「飲食店」や「美容室」を作る悲劇
最も多いのが、前テナントが「電気をあまり使わない業種(服屋、事務所など)」だった場所に、「電気を大量に消費する業種(飲食店、美容室、歯科医院など)」が入居するケースです。
例えば、美容室ではドライヤーを何台も同時に使用します。飲食店では大型の業務用冷蔵庫、製氷機、電気オーブンが稼働します。
前テナントの設備をそのまま使えると思い込んで契約すると、いざ内装工事を始める段階で「ブレーカーが落ちて仕事にならない」ことが発覚するのです。
不動産会社は「内装の電気容量」まで保証してくれない
「不動産屋さんが大丈夫と言っていたのに…」という声をよく聞きますが、不動産仲介業者はあくまで「場所を貸すプロ」であり、「内装設備のプロ」ではありません。
彼らから提示される図面や重要事項説明書には「現在の電気容量」は記載されていても、「あなたの思い描くお店を作るのに十分な電気容量か」まではジャッジしてくれません。これは借りる側の自己責任となります。
容量不足による被害額のリアルな相場
もし電気容量が足りない場合、建物の大元(キュービクルや電柱)から太い電線を引っ張ってくる「幹線(かんせん)引き直し工事」が必要になります。
- 幹線引き換え工事の相場:50万〜150万円(※距離や建物の構造により変動)
- 最悪のケース:建物全体で使える電気の上限が決まっており、「そもそもお金を払っても容量を増やせない(工事不可)」という絶望的な状況に陥ることもあります。
こうなると、高額な違約金を払ってテナントを解約するか、ガス機器に変更するための高額な再設計費用を払うかの二択を迫られ、大切な開業資金が吹き飛んでしまいます。
契約前に確認すべき防衛策
これを防ぐ方法はただ一つ。「テナントの賃貸契約にハンコを押す前に、プロ(内装業者や設計士)に現地を見てもらうこと」です。
現地調査では、分電盤(ブレーカー)のサイズや、電線管の太さ、「電灯(単相=普通のコンセント)」と「動力(三相=業務用エアコン等の強い電気)」のそれぞれの空き容量をチェックします。このワンクッションを挟むだけで、数百万円の損失リスクを完全にゼロにできます。
よくある質問(Q&A)
Q1. 内見の時に、電気容量を自分で確認することはできますか?
A. 結論から言うと、素人の方には非常に困難です。
理由は、分電盤に書いてあるアンペア数を見るだけでなく、「ビルの大元からどれだけ予備の電気が引けるか」を大家側(管理会社)に専門用語で確認・交渉する必要があるためです。必ず専門家を同行させてください。
Q2. 大家さんに交渉すれば、電気の増設工事費を負担してもらえますか?
A. 結論から言うと、原則として借主(テナント側)の全額負担になります。
理由は、その電気容量増設は「あなたの業種(お店)の都合」で行うものだからです。稀に大家さんが負担してくれるケースもありますが、基本的には初期投資費用(50万〜150万円)として自腹を切ることになると覚悟しておくべきです。
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